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TheWaveVRに行った話

最近巷で話題になった、TheWaveVRをプレイしてみました。

TheWaveVRとは、VR空間内でDJパフォーマンスができるVRSNSで、派手な演出なども可能、イベントによった形のVRSNSになっています。

どういうところなのかはいろいろな人が語ってくれていると思うので割愛します。

どちらかというと、今日お話ししたいのはTheWaveVRではなく、TheWaveVRをプレイして出てきた、僕のポエムです。いわゆる、お気持ち表明というやつです。



TheWaveVRには、事前に作られたパフォーマンスを体験するモード(パーティクルライブみたいなやつ)と、DJがリアルでライブする、というやつがあります。僕が行ってきたのはライブのほうです。

TheWaveVRに入るとまず、エントランス的なところに飛ばされます。ライブの時間がもうすぐだと聞いて始めた僕はわき目見振らずライブ会場への入り口を探しました。それっぽいのがあったので入ってみることに。するとその先ではDJライブの真っ最中でした。20人から30人ほどの人たちが音楽を楽しみ、真ん中でDJが曲をかけ、前評判の通り、ド派手なエフェクトが展開されました。

最初に思ったのは「思ったより「は」リッチじゃないな」ということ。映像で見ていると、すさまじいエフェクトが行われているという印象だったので、どれほど心を折られるのかな?と警戒していった分もあるせいか、「なるほどなるほどこういう感じなのか」という感じでした。ただ、FPSはたぶん90出ており、とても軽い(負荷的に)印象も持ちました(というか、負荷とパフォーマンスの両立、という意味ではすさまじい領域にいると思います)。その次に思ったのはアバターの統一性です。TheWaveVRは似たような数種類のアバターしかないので、みんなどれかという感じで、全く同じアバターの人もいました。ただ、アバター自体は結構抽象化されていて、不快感みたいなのもなく、むしろ好みのデザインでした。この、「デフォルトアバターしか使えない」というものに後にいろいろい深く考えさせられることになります。

こんな感じの雰囲気。アバターが数種類しかない。

しばらくすると、数人が僕のほうによってきます。フレンドボール?みたいなのを僕に寄せてくるのですが、どう対応すればいいかもよくわかりません。手を当ててみたりしても反応せず困っていました。すると一人が、「Trigger」といってくださったので手をボールにあててトリガーを引くとフレンド登録されました。なるほどなるほど、こういう風にしてフレンド登録をするのか、と。始めたばかりで右も左もわからない僕にはフレンドは大歓迎です。僕によってきた数人の人に見様見真似でフレンドリクエストを送ります。無事に承認してもらえました。ここで、自分の声が聞こえているのか気になりました。「自分がしゃべってるかどうか」や、「他人がしゃべっているかどうか」がわかるUIがぱっと見ないのでわからなかったのですね。一人の人に「Can you hear me?」と聞こえてますか?と聞くと聞こえているようで返事を返してくれました。そこから適当に英語(へたくそイングリッシュ)を駆使して会話を続けます。これが衝撃的でした。この会話の距離感がありえないほど気持ちよかったのです。それはVRChatを始めたころに味わった頃に感じたような心地よさに少しだけ似ていました。



私がVRChatを始めたころはハックツールの最盛期で、コミュニティの中にいる人たちはみんなプライベートにいました。そこにアクセスするのはとても難しく、日本人を求めてパブリックをさまようしかありませんでした。JapanTownにたどり着くと、そこには多くの日本人がいましたが、VRChatを始めて何か月、みたいな人はほとんどいませんでした(そもそも2018年1月の時点ではVRChatをはじめて長くてもひと月の人がほとんどだった)。みんなVRChatをはじめて3日です、とか今日はじめました、みたいなひとばかりでした。そこでの会話はどうやってVRChatを知ったのか、こんなアバターの人がいた、みたいなはじめたばかりのときにありがちな会話でしたが、とても心地よかったのを覚えてます。今振り返ると、たぶんそこには「VRChatに興味を持った人たち」が集まっていたのです。しかもみんなあったばかりの人たちなのに。見知らぬ人たちとの共通の話題として「VRChat」が存在し得ました。


今のVRChatではこういう雰囲気を感じるのは少し難しくなっていると思います。パブリックに行くと、見知らぬ人たちとは会えますが、VRChat歴の長い人も多く、いまさら「VRChatに興味を持っている」人は多くないです。多分多くの人にとって関心ごとは、アバターやワールドやイベントであって「VRChat」ではないと思いますから(もちろん新規の方もいらっしゃいますが、新規を経験者が囲うという光景が一般化していますので、割合も多分そういう比率なのでしょう)。またアバターやワールドといっても作っている人もいればめぐる人もいますし、ひとによってフォーカスする対象も違います。つまるところ共通の話題、が今のVRChatのパブリックでは成立しにくいのです。たぶん(これは僕の主観です)。ちなみに、これは悪いことではないと思っていまして、VRChatはもうコンテンツではない、ということはVRChatは日常のインフラとして成立しているということですね。すごすぎることだと思いますし、諸手を挙げて歓迎すべきでしょう。

さて、ではパブリックではないところ、フレンドプラスや一部のフレンドオンリーなどはどうでしょうか? VRChatはシステムとして「人にjoinする」というシステムを取っています。つまり会いたい人のところに会いに行くわけであって見知らぬ人たちに会えるわけではないです。この話題について話したいときににはこの人のところに行けばいい、みたいなことは可能ですが、新しい人と話せる確率、つまり未知との遭遇率が減るわけです(逆にいうと、フレンドのフレンドみたいな人と初めまして、ができると話題に共通性がある可能性があり、ヒットすれば「求めてた」状況にはなりえますね。)。



こういうのを解決するにはどうすればいいかというと、一つの策として「場に集まる」というのが挙げられます。VRChatにおけるバーやクラブにはそういうところを(できる限り)になっている側面があると思います。ただし、未知との遭遇率はそれなり、という感じです(フレンドプラス等である以上仕方がない。)

たぶん、ファンタジー系のワールドに行けばファンタジーが好きな人たちが集まっていて、宇宙船ワールドに行けば宇宙の好きな人たちに会える、そういうのがわりと理想だったのかもしれませんがVRChatはそうなっていないですし、これからなることもないでしょう。

ちなみにじゃあ現実は?と聞かれてもそういうところはあまり思いつきません。強いて言うならクラブでしょうか・・・。クラブはそういうところだと聞いています(詳しくない)。というか現実でそういう見知らぬ人との会話を要求する行為をするのは普通は危険だったりもしますね、はい。



なるほど、僕がツイッターを好きになるわけです。



ではTheWaveVRは?と聞かれると、これがかなり良くできていると思うのです。つまりそのジャンルの音楽やパフォーマンスに興味がある人達が「場」に集まることができるわけです。また、ライブ、という形をとることで、人を集めることができます(24時間空いててもしょうがない)。結果としてある程度の人数が「人」ではなく「場」に集まることに成功しているわけです。また、アバターがないことも「没個性」を起こせていると思います。誰かに個性があるわけではないので、「みんなが興味あること」を「みんなで体験する」という形がとても尊重されて、それ以外がそぎ落とされているように思います(たとえば、ライブが主役なのに、誰かのかっこいいアバターがライブを置いて注目を集めることがない)。また、システム側にもそれをうまく促進するような仕組みがあって、TheWaveVRではライブ中にいくつかの公式の用意したエフェクトを自分で出すことができるのですが、近くに同じエフェクトを使っている人がいると、自分とその人のエフェクトが連携をします。まるっきり赤の他人と連携をしてもしょうがないわけですが、「この場に来ている(=自分の興味のあるこのパフォーマンスに興味がある人)」知らない人と、このような形で軽いコミュニケーションをとれるのは最高にクールだなと思うわけです。ほかにも、一緒にトリップする、なんていうエフェクトもあり、これも同様に良いなと思うわけです。また、アバターになにか仕込めるわけでもないので治安の維持も容易ですし、その結果「ライブ会場に誰でもはいることができる」ことを可能にするわけです。


ちなみに、じゃあVRライブはどうなんだ、という話をされるかもしれませんが、ここで一番着目しているのは「場を媒体にした交流」であって「場」そのものではないので、今回は割愛します。(多分アレほかの人と会話できませんよね・・?)

ここから先は理想論になるんですが、VRSNSの特質の一つとして「安全性」が挙げられると思うのです。つまり知らない人と話して、いくら盛り上がっても安全なわけです(すくなくともリアルよりは格段に)。 VRChatはVR空間で生きる、という未来を提示してくれましたが、もしかしたらこういう形のVRSNSは、「知らない人たち」と「興味のあることで盛り上がる」チャンスが「24時間いつでもどこでも、「何も」いらずに」ある、というリアルではなかなかないかもしれないものを提示してくれるのかもなあと思ってしまいます(しかも世界中から集まれるのでマイナーな話題でも行ける)。おそらくモラルの問題を考えると敷居が存在しなければいけないとは思うのですが、それでも何かを期待してしまいます

と、まあゴリゴリにTheWaveVRを推してきたわけなのですが、人が増えたり減ったりしたらどうなるかはわかりませんね。というか初期のVRChatが割とこうだったのでは?と先人の話を聞いて思うので、これはTheWaveVRが理想なのではなく、これぐらいの規模のVRSNSが理想なのでは見たいな話に落ち着きかねないのでアレなのですが。まあ、はい。よろしければみなさんやってみてください。土曜の午後とかならアメリカ金曜夜なのでいいと思います(たぶん)。

おしまい。